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聖歌は生歌

聖歌は生歌

年間第19主日

《A年》
 81 神よわたしに目を注ぎ 
【解説】 
 今日の答唱詩編の詩編85は「平和の回復を求める祈り」と言われています。カナンに定住以前はもちろん、定着
後も、イスラエルは周りの国々からの侵略に脅かされ、「平和」を享受することは、なかなかできませんでした。特に、
バビロン捕囚による打撃は大きく、回復の希望を持つことすらできないほどでした。神の約束される「平和」は、ただ
単に「争いがない」状態ではありません。神が神として認められ、神の支配が満ち満ちていることが「平和」なので
す。
 答唱句は、最初の2小節、中音部→三度の下降→二度の上行を繰り返します。「目を注ぎ」は、前半の最高音が
用いられて、神の救いのまなざしが暗示されます。後半は、G(ソ)→C(ド)という四度の跳躍と付点八分音符+十六
文音符のリズムで「強めて」を強調します。さらに、この部分、「強め」では、和音もソプラノとバスが2オクターヴ+3
度開いていて、これによっても強調点が置かれていることがわかります。「ください」は、倒置の終止を表すために、ド
ッペルドミナント(5度の5度)という、属調での終止を用いています。が、すぐに元調へ戻り、反行を繰り返しながら終
止します。
 詩編唱は、グレゴリオ聖歌の伝統を踏襲し、属音G(ソ)を中心にして歌われます。
【祈りの注意】
 答唱句で最初に繰り返される音形は、畳み掛けるように歌いましょう。この部分をメトロノームではかったように歌う
と、祈りの切迫感が表せません。「神よ」と「目をそそぎ」という、四分音符の後の八分音符を、早めの気持ちで歌い
ます。上行の部分も、上り坂でアクセルを踏み込むような感じで歌うと、祈りの流れが途絶えません。冒頭はmf 位
で始め、上行毎に cresc. して、「つよめて」で頂点に達し、音の強さも気持ちも ff になります。その後は、徐々
に、 dim. しながら rit. しますが、精神は強めたまま終わらせましょう。最後の答唱句では、特にこの rit. を豊かに
すると、いつくしみの目を注いでくださり、強めてくださる神の手が、静かに優しくわたしたちの上に伸べられる様子が
表されるでしょう。
 第一朗読では、エリヤが神に出会う場面が読まれます。旧約時代、神は、雲の中におられる、雷は神の声の象徴
という考えがありました。しかし、列王記では、そのような、自然現象の中(地震や火)には神はおられず、それらの
後に「静かにささやく声」によって、神はエリヤに語られます。今日の朗読箇所のすぐ後で、エリヤは神から召命を受
け、ハザエルをアラムの王に、イエフをイスラエルの王にするために油を注ぎ、また、エリヤ自身に代わる預言者とし
て、エリシャにも油を注ぐように命じられます。このときのイスラエルの共同体は、主を捨ててバアルに仕えようとして
おり、まさに、艱難辛苦をなめながらの預言職でした。
 福音朗読の出来事も、教会と言う船の中から、大海に象徴される、世の嵐の中に福音を伝えに行くことを暗示して
います。
 わたしたちにとっての平和とは、人々との争いがない状態とか、和気あいあいの仲良しクラブを作ることではありま
せん。神が神として認められ、神の支配が満ち満ちている状態、平和=神の国、が完成するように、祈るとともに、派
遣されて働くことが求められているのです。
【オルガン】
 答唱句の性格から、明るめの音色を使うのがよいでしょうか。フルート系を基本に、人数が多い場合は、あまり強く
ない、プリンチパル系を加えてもよいかもしれません。いつものことですが、それでも、答唱詩編の本来のあり方か
ら、逸脱しないことが前提です。
 前奏のとき、祈りの注意で指摘した、幾つかの注意点をしっかりと提示しましょう。前奏がメトロノームではかったよ
うに弾いたり、祈りの流れが途絶えるようなものだと、会衆の祈りも、同じようになってしまいます。いつも指摘するこ
とですが、オルガン奉仕者はいつも、答唱句と詩編唱を、自分の祈りとして、身に着けていてほしいと感じます。

《B年》
 128 主を仰ぎ見て
【解説】
 詩編34は個人的な詩編で、内容的には《知恵文学》と共通する点が多く(特に12-15節)、構成は、同じアルフ
ァベットの詩編25に似ています。それは、ヘブライ語の第6文字が省略されていることや、最後の23節目がアルファ
ベットの配列外という点です。ちなみに、ヘブライ語のアルファベットは22文字ありますが、一字削ることで、3組×7
節=21節となります。ユダヤ教では、3も7も完全数になるからです。表題は、サムエル記21:11-16にある物語
と一致しますが、詩編自体の内容はそれほど関連があるとは思われません。この曲では歌われませんが、9節に
「深く味わって悟りを得よ」ということばがあることから、特に、古代教会ではミサの会食(拝領)の歌として用いられて
きた詩編です。
 答唱句は、この詩編の6節から取られています。全体は、八分の六拍子で流れるように歌われます。冒頭の四分
音符の次の八分音符が、テンポを決定する鍵で、これを含めた、連続する四つの八分音符が、テンポを持続させま
す。「を仰ぎ見て」の旋律の上昇音階と、旋律が「て」を延ばしている間に「ぎ見て」と歌われるバスの上昇音階が、
主を仰ぎ見る姿勢を表しています。さらに「光を受けよう」で旋律が最高音C(ド)からG(ソ)へ下降することで、主から
注がれる光を浴びて受ける様子を表します。また、その「よ」を付点四分音符で延ばす間、テノールとバスが「受けよ
う」を遅れて歌うことで、光が輝く様子も表されています。後半は、「主がおとずれる人の」で、バスとテノールがC(ド)
を持続し、旋律は徐々に下降してゆくことで、主の光を受けた人の顔もこころも穏やかに落ち着いて、輝くように、答
唱句も静かに終止します。
 第三音E(ミ)から始まった詩編唱は、第二小節で、最高音C(ド)に達し、最後は属音のG(ソ)で終わります。和音
の開きが少なく、特にバスの音が高いので、全体的に響き渡るように歌われます。
【祈りの注意】
 解説でも書いたように、冒頭の四分音符の次の八分音符が、テンポを決定する鍵で、これを含めた、連続する四つ
の八分音符が、テンポを持続させます。冒頭の四分音符の次の八分音符をやや早めに歌うことが、答唱句を活き活
きとさせます。この四分音符が間延びすると全体のテンポもだらだらとしてしまいますので、そうならないように気をつ
けてください。旋律が「見てーーーー」を八分音符5拍延ばす間に、バスが「おぎ見てー」と、仰ぎ見る姿勢を強調しま
す。混声で歌う場合でなくても、この「見てーーーー」をしっかりと5拍延ばし、決して短くならないように、気をつけまし
ょう。最高音C(ド)で歌われる「よ」は、乱暴にならず、胸を開いた明るい声で歌うようにしましょう。後半は、旋律が
徐々に下降してゆきますが、この間に、少しずつ dim. と rit. して、穏やかに終わるようにしましょう。
 詩編唱の1節の1小節目は、最初の音の音節が少ないので、ゆっくりと歌い始めます。音が動く「たたえ」でわずか
にテンポを早めますが、また、すぐに rit. します。その後は、どの小節も、基本のテンポではじめます。3小節目と4
小節目の、終止の四分音符の前の、もう一つの四分音符は、音節の数に応じて長さが変化する音符です。詩編の1
節の場合は「ほこり」と1音節ずつ歌います。決して「ほこーり」とならないようにしましょう。これは、詩編唱の3節の
「おくり」も同様です。
 詩編唱は、まさしく、第一朗読のエリヤの気持ちを黙想します。さまざまな苦難に出会うとき、この詩編は、わたし
たちのこころの支えとなるはずです。主キリストをはじめ、弟子たちも、多くの迫害を受けた初代教会の人々も、この
詩編をお互いを励ますために、会食(拝領)の歌で歌ったのかもしれません。
【オルガン】
 答唱句のことばを考えると、明るめの音色が良いと思いますが、プリンチパル系は避けましょう。オルガンの前奏で
は、祈りの注意で書いた、テンポの決定が、やはり、重要です。オルガンが、前奏でしっかりと提示し、伴奏中も、目
立たないように、会衆の祈りを、テンポ良い祈りにしたいものです。加えて、答唱句の最後の rit. も重要です。前奏
のときもそうですが、会衆が歌っているときも、会衆の祈りを、静かにふさわしくおさめることができるように、助けるこ
とができれば、いうことはありません。これらは、単に、前奏や伴奏で音を出せばいいのではないことは言うまでもあ
りませんが、これら、テンポも rit. も、毎回の伴奏と、それを準備する練習と、さらには、それらを含めて、生涯、祈り
を深め、味わい深いものにすることは、生涯問われ続けていることを忘れないようにしたいものです。
 なお、最後の dim. は、パイプオルガンや、足鍵盤を使っているときにはできませんが、リードオルガンでは、ふい
ごの踏み方で表現できますから、リードオルガンを使う場合には、dim. も祈りを深めるようなものにしてください。

《C年》
 46 神の注がれる目は
【解説】
 その詩編の18節から答唱句が取られている、詩編33は、創造主、救い主である神をたたえる賛美の詩編です。6
節の「星座」(ヘブライ語の原文では「軍勢」)は、天にいる神の軍隊のことで、神の栄光を示し、その命令を実行する
ものです。6節には、「神(原文では「主」)」の他に、「ことば」「いぶき」という語句があることから、教父たちは、「こと
ば」=神のことばであるキリスト(ヨハネ1:1)、「いぶき」=聖霊、と考え、この詩編には三位一体の秘義が隠されて
いると考えました。
 答唱句は8小節と比較的長いものです。前半は「神」と言うことばが三回出てくることや、神のやさしいまなざし=
「目」を強調するために、旋律は高い音が中心となっています。特に、「目」は最高音のD(レ)の二分音符で歌われ
ます。二回出てくる八分休符は、次の「神」をアルシスとして生かすためのものですが、バスは八分休符ではなく四
分音符で歌われ、どちらも精神を持続させながら緊張感を保ちます。後半の「希望を」では、「きぼう」で旋律とバスの
音程が2オクターブ+3度開き、バスのオクターヴの跳躍で、ことばが強調されています。
 詩編唱はドミナント(属音)から始まり、同じ音で終止し、下一音(Fis=ファ♯)以外はすべて上方音というところは、
グレゴリオ聖歌の手法が生かされています。答唱句、詩編唱ともに、最後は順次進行で下降し、落ち着いて終止し
ています。
【祈りの注意】
 解説に書いたように、答唱句は8小節と比較的長いので、全体に、緊張感を持って歌う必要があります。とは言え、
早く歌う必要もないのですが、間延びすることのないようにしましょう。そのためには、まず、冒頭の「神の」の「の」の
八分音符が遅れないように、言い換えれば「かみ」の四分音符が長すぎないように、と言うことです。最高音D(レ)が
用いられる「目」は、この詩編でも歌われるような、いつくしみに満ちた神のまなざし、十字架の上から、愛する弟子と
母に向けた、キリストのまなざしを表すように歌ってください。高い音なので、どうしても、音を強くぶつけてしまいがち
(「メー」)ですが、このように歌うと、怒りと憤りに満ちた音になってしまいます。高い棚の上に瓶をそっと置くような感
じで、声を出すようにするとうまく歌えます。「ものに」は、アルトが係留を用いているので、やや、rit. しますが、これ
は、分かるか分からないか程度のものです。決して、「あ、リタルダントしたな」と思わせないようにしましょう。後半に
入ったら、すぐに、元のテンポに戻します。最後の「希望を」は、少し、テヌートして「希望」をしっかりとこころに刻みま
しょう。最後は、rit. することはもちろんですが、やや、dim. もすると、安心して答唱句の祈りのことばを終わらせるこ
とができるでしょう。
 答唱句のテンポは「四分音符=88くらい」ですが、冒頭は、これよりやや早めのほうがよいかもしれません。
 第一朗読では、「知恵の書」が読まれます。ここでは、イスラエルの民にとって、最も大きな出来事となった、エジプ
トでの「主の過越」について語られます。「主の過越」は、前もってイスラエルの民に語られました。それゆえ、イスラ
エルの民は、その長子を失うことなく、エジプトの力脱出することができたのです。しかし、福音朗読では、主の再臨
について「人の子は思いがけない時に来る」と言われています。主の再臨もそうですが、わたしたちにとって、この世
からの脱出=死も、思いがけないときにやってきます。ですが、死は、わたしたちにとって、復活への新たな門であ
り、ある意味では、希望と言うことができるでしょう。それゆえ、わたしたちは、神が「天から目を注ぎ、いつも見ておら
れる」ことを心に刻みつけ、日々「神のうちにあって喜び、とうといその名により頼み」ながら、「主が来られる」のを待
ち望みたいものです。
【オルガン】
 答唱句は、どちらかと言うと、やや、明るいストップを用いたいものです。人数によってはフルート系で2’を入れても
いいかと思いますが、あくまでも答唱詩編なので、派手なものは避けるようにしましょう。前奏は、きびきびと、歌うテ
ンポで弾くようにしましょう。オルガンが前奏をだらだらと弾いていると、それは、いつの間にか会衆にも伝わってゆく
ものです。答唱句の最初、「神の」の「の」をやや、早めに弾くことも忘れないようにしましょう。また、バスが、四分音
符で早く出る前の rit. とバスが出てから、テンポを戻すことなど、細かいニュアンスも、大事にすることが大切です。
さらに、途中の rit. やテヌートも、毎回、きちんと表現する(前奏でも、伴奏中も)ことで、会衆も次第にできるようにな
るはずです。



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